『しぜんかんきょう』創刊号

Cover Story

日本の自然保護運動のひとつ、ナショナル・トラストは古都・鎌倉からはじまった。

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ナショナル・トラストは、住民たちが緑地などの自然環境や歴史的地区を買い取り、保全を図る運動で、1895年に英国で結成された民間団体「ナショナル・トラスト」が先駆けとなり、国際的に広まった。日本で最初のナショナル・トラストとなったのが、宅地開発の計画が持ち上がった鎌倉・鶴岡八幡宮の裏山「御谷(おやつ)」である。御谷はかつて、現在の八幡宮の僧坊があった場所。その開発に、作家の大佛次郎ら著名人や地域住民から反対の声が上がり、1964年に保存会を設立。ナショナル・トラストの手法に着目し、集まった募金や市の寄付を元手に、業者が入手していた土地を取得し、開発をストップさせたのだった。この運動により、歴史的地区の開発を制限する法整備にもつながった。1966年制定の古都保存法は、京都、奈良、鎌倉などに「歴史的風土保存区域」や「歴史的風土特別保存地区」を定めて土地利用を制限するいっぽう、買い入れなどの補償制度を設けた。市内での地区指定も進み、「民間団体の運動が、保全の法的なよりどころを得た」と評価されている。とはいえ、鎌倉は「山の緑」を守ることはできたが、海岸線にある松林と海岸浸食による一部の海水浴場を守ることはできなかった。

​(文:森下茂男)