Art Gallary
佐藤秀明の、夏の北極紀行。
撮影:佐藤秀明
地球温暖化によって北極圏の植物が良く茂るようになって、それが温暖化に拍車をかけているという調査結果が発表された。ドイツのゼンケンベルツ生物多様性・気候研究センターが主導した調査で、研究論文が『ネイチャー』誌に掲載されたのである。北極圏の凍土帯(ツンドラ)は世界の土壌炭素の3分の1から半分を含むことから、長年にわたり気候変動の調査が重点的に実施されてきた。北極圏の気温はこの30年で、夏に1℃、冬に1.5℃上昇していたそうだ。その結果、植物の高さが伸びただけではなく、背の高い植物が比較的暖かい地域から寒い地域へ拡散してきたことも確認された。背の高い植物が増えると、多くの雪が地表に保持されて、その雪が断熱材として、冬になったときに土壌が固く凍るのを緩和する働きをする。その結果,凍土が解けて温室効果ガスの炭素を放出するプロセスが速まっているのだという。いずれにしても夏の北極は色とりどりの花に覆われて、美しい絶景を見せてくれている。写真はカナダ北極のバフィン島、ポンドインレットの夏の風景だ。年々 海の氷は少なくなり、陸地の花は増え続けている。
世界中で見ることができるヒナゲシの北極種、北極ヒナゲシ(ホッキョクヒナゲシ/Papaver radicatum)。いずれの花も6月から7月にかけて陽だまりの、比較的暖かい場所で一斉に花開く。次頁見開き写真の黄色い花がこの北極ヒナゲシ(一般名はアークティック・ポピー)。
北極を代表する花、紫雪の下(ムラサキユキノシタ/Saxifraga opposistifolio)。どこでも見られる夏の花で、イヌイットの自治区であるナヌプト准州の州花だ。バサースト島で見た群落には度肝を抜かれた。
キャプションも佐藤秀明
佐藤秀明プロフィール
新潟県生まれ。日本大学芸術学部卒業。フリー写真家。日本写真家協会会員。
1967年ニューヨークへの旅を振り出しに世界や日本を旅し、雑誌、グラフ誌を中心に作品を発表。 現在は日本各地の雨を取材中。 主な写真集:『ガクの冒険』本の雑誌社、『地球極限の町』情報センター出版局、『海まで100マイル』片岡義男と共著/晶文社、『鎮魂 世界貿易センター』ICG MUSE、『ユーコン』スイッチパブリケーション、『ノースショア 1970~1980』ブエノブックス、『雨のくに』ピエ・ブック、『路地の記憶」阿久悠と共著、『川物語』本の雑誌社、『伝説のハワイ』東京書籍、『ロンサム・カウボーイ』ボイジャーなど多数。