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イルカやクジラを通したアイサーチ・ジャパンの
環境教育と啓蒙活動

「大きな“水のつながり” の中で生きている私たち」

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アイサーチ・ジャパン代表の相良菜央さん

アイサーチ・ジャパンの代表、相良菜央さんは物心がつくころからイルカが大好きだったそうで、そのため、幼心にイルカたちのために海をきれいにしようと思っていたという。「幼稚園のときはお母さんと手をつないでいないと街を歩けないじゃないですか。そうすると、道路に落ちているゴミが海に流れ出ちゃうと大変だから、そのゴミを拾いたいのに、親に『汚いから触っちゃだめ』って言われる。それはわかるので、拾えなかった。6 歳になって小学校へ通いはじめるとひとりで歩けるようになるので、『拾える!』と思い、親に内緒で、イルカたちのためにゴミ拾いをしていた子でした。小さいときから環境のことを知らず知らずの内に考えていました」

 大学時代、相良さんはなにか活動をしたいと思って環境関連のボランティア団体を調べていると、アイサーチという団体がまさに相良さんと同じ考えをもち活動していることを知り、参加したという。「アイサーチに入ったからこういう活動をしているのではなくて、幼いときからやってきたことがアイサーチと重なったということです」。アイサーチ・ジャパンは1991 年から多くの人が活動に携わってきた団体で、相良さんはそのバトンを引き継ぐ一人として運命的に出会ったと言えるのだろう。こうして 2018 年に 3 代目の代表に就任する。

 実際、アイサーチ・ジャパンはどんな活動をしているのだろう。「イルカ・クジラをテーマとして、海の環境や生き物の素晴らしさを知り、人の暮らしとの関係性を考えてもらうきっかけ作りをすることがこの団体の趣旨です。イルカやクジラは興味深い面がたくさんあるので、まずは彼らの生態や魅力を紹介します。海の世界に親しみを持ってもらったうえで、海と人の暮らしについて“水のつながり” の話をして考えてもらいます。海と森はつながっていて、その大きな“水のつながり” の中に私たちも生きているから、海の未来のために私たちにもできることがたくさんあるというメッセージを届け、より親しみやすいカタチで自然環境を考えてもらう環境教育を心掛けています」と、相良さんは幼稚園児にもわかるように優しく語る。

 「活動は、イルカ・クジラと海について楽しく学べる『海の環境学習教室』をイベント会場や学校などで実施したり、大学からSDGs の講義依頼をいただいたりしています。SDGs14 番『海の豊かさを守ろう』の海洋ゴミについて、実際にクジラの胃の中から出てきたゴミの写真を見せ、考えてもらいます。『では、このゴミを減らすにはどうしたらいい?』と投げ掛けると、多くの人は、『海にゴミを捨てない』と答えてくれますが、『それも大事だけど、もっとできることがあるんだよ』と続け、 山や森、川と海のつながりの話へ。 そして『海にあるゴミの約 8 割が陸地から流入したものだとも言われていて、普段からゴミを減らす生活をすることが海ゴミを減らすことにつながる』と。参加者からは、『日常での少しの意識が大事だと気付きました!』、『一人ひとりの行動が豊かな海へつながると知り、マイボトルへと変えることを決めました』、『もっと積極的に環境に良いことやりたいと思いました』などの声をいただきます」。相良さんは、SDGsというのは、自分自身の行動を変えるという意義があると強調する。

 アイサーチ・ジャパンはこのようなワークショップなどの環境教育を月に2回ほどの頻度でおこなっている。「たとえば、由比ヶ浜でのビーチクリーンはアイサーチの自主企画で、季節ごとにおこなっています。私たちのビーチクリーンはほかとは違っていて、ゴミを拾って終わりではなく、ゴミを拾う時間と同じ分の時間を作ってディスカッションを行い、このゴミを少なくするにはどうしたらいいだろうかなど、ゴミを拾った直後の熱量がある状態で意見交換をしています」

 

2 月の下旬、関東に大型寒波が押し寄せていた夜、Zoom でのインタビューに自室で応じていた相良さんは最後にぽつんと言った「この冬、まだ部屋の暖房を一度もつけてないんです。このまま暖房なしでいけますかね?」と。ホンモノの環境活動家、いや戦士ともいえる彼女の揺るぎない信念と行動は、こうした自分自身を律する生活の中から醸成されていたのだ。(文:森下茂男)

アイサーチ・ジャパン ICERC Japan(International Cetacean Education Research Center)は、オーストラリアの非営利団体ICERC の姉妹団体として1991 年に設立。 2005 年「愛・地球博」出展以降は、イルカ・クジラの生態や彼らを取り巻く自然環境について分かりやすく伝える教育プログラムに力を注いでいる。

https://icerc.org

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