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環境トピックス

その3

砕氷能力をもつJAMSTECの新たな北極域研究船「みらいⅡ」、
2026年、竣工。

有人潜水調査船「しんかい6500」とその支援母船「よこすか」、地球深部探査船「ちきゅう」、令和6年度の能登半島地震の緊急調査航海をおこなった学術研究船「白鳳丸」など、調査研究をおこなうための特殊な機器を装備した専門の船舶を数多く所有する国立研究開発法人海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)は、現在、新たに砕氷能力を持つ北極域研究船「みらいⅡ」を建造中だ。

 1997年の竣工以来、1998年9月には最初の北極海研究航海を実施するなど、海洋の探査や研究で秀でた業績を上げていたJAMSTECの海洋地球研究船「みらい」は老朽化などにより2025年度をもって運用を停止することとなった。「みらいⅡ」は「みらい」から、船名とともに北極域を含む調査・観測活動を引き継ぐ予定で、円滑に調査・観測活動を開始できるよう、2026年11月の完工・引渡しをめざして建造と運用準備を進めている。

 日本の砕氷船で有名な南極観測船「しらせ」は厚さ1.5mの海氷を船速3ノット(時速約5.56km)で連続砕氷可能という世界屈指の砕氷能力を有しているが、今回建造が進められている北極域研究船「みらいⅡ」の砕氷能力は、厚さ1.2mの海氷を船速3ノットで連続砕氷可能なレベルだという。

 「みらいⅡ」は観測のためのさまざまな装備を有するが、特徴は、高精度な大気・気象観測ができるドップラーレーダーとムーンプールだ。船体の中央に穴が開いていて、このムーンプールから観測機器を降ろすことで、海氷下の観測を安全に実施できる。また、船上のクレーンでゴンドラを吊り、研究者を海氷上に降ろしたり、ゴンドラから直接海氷上の作業を行うオペレーションを計画している。これによって、海氷の観察や計測、試料の採取が可能になる。また、氷の厚さを非接触で計測できる電磁誘導式氷厚計が搭載可能だ。海氷面積や分布の予測に不可欠でありながら不足している海氷厚のデータ取得をめざす。

 そのほか、「みらいⅡ」では、アイスレーダーや赤外線カメラなどによって氷況(海氷の状況)をモニタリングし、また砕氷などによって船体に生じるひずみや、スクリュープロペラの推力やトルクを連続的に測定し記録する。それらはデータとして蓄積され、航行中に操船のガイドとして、また下船後の検証によって安全で効率的な運行計画の策定や操船方法の改善にも使える。観測データを取得したときに、船がどの位置にいて、どういう氷況だったかもわかる、運航面だけではなく研究面でも役立つ機能になっている。

 海氷や砕氷船の専門家で東京大学名誉教授の山口一さんは、「北極域研究船は必要十分な砕氷・耐氷性能と、海氷域だけでなく通常海域における観測性能を両立する船。その設計は、とても難しいものです。しかし、日本の造船技術は非常に優れています」

 日本の北極域研究者の長年の願いが、今、実現しようとしている。

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砕氷能力をもつ北極域研究船「みらいⅡ」 ©JAMSTEC

協会マーク_green.png

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