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牙を剥くテトラポッド

文:ペドロ・ゴメス

私の名前はペドロ・ゴメス。サーフィン、ビーチシーン、アウトドアを専門とするプロの写真家/映像作家です。私の仕事では、自然の風景や波という豊かな自然環境に頼る部分が多いので、この大自然を最善のカタチで保全し、大自然をリスペクトすることは、私の仕事の一部であると同時に、地球という偉大な自然環境を次世代に引き継ぐための義務であるとも考えています。

 今、私は、自然の生息環境や地形に影響を与えるようなテトラポッドなどの建築物を見ると、「この場所にこのコンクリートの塊(かたまり)は必要なのだろうか? この美しい海の景色を遮る巨大な壁は必要なのだろうか? このコンクリートの巨大な壁で、自然災害を防ぐことができるのだろうか?」。これらは自分自身への問いかけでもありますが、私はこれらの疑問に正確な答えを導き出すことができるような専門知識も、また専門の技術者でもないので、明確な答えを出すことはできません。 しかし、2011 年に東北地方を襲った大津波では、テトラポッドや高い壁は、その地域を広範囲に破壊し、なおかつ大きな原発事故を起こし、無数の人命の損失をもたらした大津波による災害を止めるには十分なものではありませんでした。

 2012 年、静岡県磐田市でもうひとつ運命的な出来事が私の身に起こり、あらためてテトラポッドについて否定的な考えを確かにしました。台風一過の中、私は水中撮影をおこない、完璧なチューブの写真を撮ろうとしていました。なにもかもがあっという間で、気づかないうちにテトラポッドの近くにできたカレントによってテトラポッドの前まで吸い込まれそうになり、最後にはひときわ大きな台風の波によって、テトラポッドに叩きつけられ、コンクリートについていたフジツボやカキの殻で体中を傷つけ、大量に出血していました。そのうえ、肋骨が6 本折れていることが、病院に運ばれてわかりました。また大切にしていたカメラとウォーターハウジングもテトラポッドによって完璧に破壊されてしまいました。理学療法と安静によって回復に5 ヶ月かかりましたが、コンクリートの下で死に直面したトラウマは今でも残っており、テトラポッドの多い場所や大きな防波堤の近くでは泳いだりサーフィンをしたりしないようにしています。そして今、テトラポッドの撤去などについて幅広い議論が必要なのだと実感しました。

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環境問題に声を上げることができる海辺の生き物といえば、サーファーしかいないだろう。ペドロ・ゴメスは環境活動家の道を歩みはじめた
https://www.pedrogomesphoto.com

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