




Art Gallary
ブルース・オズボーンが提唱する
地球環境の現状をアートで表現する「Nature Calls」
撮影:ブルース・オズボーン
Nature Calls is a collection of plastic and other marine debris found on the beach. Manmade waste is having a huge environmental impact on the ocean and its sea life. In addition to raising awareness about this issue, I also wanted to demonstrate how trash can be transformed into something bright and attractive

Tangle(ロープ類)
Bottle and Sea Glass(ビーチグラス)
Twisted(漁網)
はじまりはビーチコーミング
半世紀ほど前にカリフォルニアから日本へ活動拠点を移したフォトグラファー、ブルース・オズボーンは「OYAKO」シリーズなど数々の作品シリーズを生み出しているが、新たなシリーズ「NATURE CALLS」の創作活動をはじめたのは、いまからおよそ10 年ほど前のことだ。葉山のビーチ沿いに引っ越してから日課のようになったビーチコーミングが作品作りに大きく影響していると、ブルースは話す。
なぜ海洋ゴミで創作した作品に「NATURE CALLS」というタイトルを付けたのかをブルースに訊くと、最初は軽い気持ちだったと冗談ぽく言う。「ほら、自然が呼んでいるっていうのは、英語でも“トイレに行きたい”っていうスラングなんだけど、ぼくの作品を見て感じた人が決めればいい。ぼくがビーチコーミングで集めた膨大なコレクションは、いわゆる海洋ゴミなんだね。海に漂い潮や砂、風によってもまれたプラスチックなどの海洋ゴミは、ぼくの中ではゴミという概念ではなくなり、なにかきれいなものを拾っているという感覚なんだ。いつもはスライド写真を見るライトボックスの上にそれらのゴミを並べて載せて撮ったらすごく美しい写真になった」という。それが「NATURE CALLS」という創作活動をはじめるきっかけとなった。「NATURE CALLS」は、ある意味、私たちの地球環境の現状を考える「自然からの警告」でもあったわけだ。
また、ビーチコーミング仲間が各自持ち寄った「ビーチで拾ったコレクションの自慢会」もブルースにとっては大きな励みになったという。私も何度か参加したことがあったが、ほぼ毎年おこなわれるこの自慢会には、ときには10 数名の参加者がいて、その年いちばんの自慢したい拾い物を持ち寄って見せあい、自慢しあっていたのだ。「最初はビーチグラスや貝などを集めていて、見せあっていたけど、そのうちに彼らが集めていないビーサンとか空き缶、ライターにプラスチックの破片などを集めはじめたんだよ。だってビーチコーミング仲間に競争相手がほとんどいないからね」
ブルースが収集したコレクションは、漁網や釣りのウキ、靴底、ゴルフボール、サングラスなど多岐にわたっている。ブルースは毎回、ビーチコーミングで集めたさまざまな収集物をすべてアイテム別、大きさ別、色別などに細かく分別し、大きな瓶に分類して入れ、棚に並べて飾っている。それが海洋ゴミだと気付く人は少ない。そして、とっておきの裏コレクション収集物の一部は棚の奥にしまわれている。

Mondrian Moment(ライター)
Plastic Pallet(プラ破片)
「環境を考える写真展 ~ NATURE CALLS(go-me / ごみ)~」におけるGO ME 運動
この10 月に京浜急行線の葉山・逗子駅近くでおこなわれた「環境を考える写真展 ~
NATURE CALLS(go-me / ごみ)~」において、ブルースは自身の膨大なゴミ収集物と作品を組み合わせたインスタレーション・アートを展示した。前4ページ及び右頁に紹介した写真がそのときのものだ。インスタレーション・アートは自分だけでできる作品ではなく、ほかの参加者たちとのコラボによって完成する作品だとブルースは考えている。「親子をはじめとしたさまざまな年代の人たちみんなで考えながらアイデアを出しあい、一緒に楽しみながら飾っていったんだ。会場をみんなで作り上げるのは僕にも刺激があって、丸一日かかったけど楽しかったよ」
いまや、プラスチックは生活の必需品になっているというブルースは、「これからはどんどん作ってどんどん捨てるという生活のスタイルを変えていかなければいけない」と静かに言い切る。私たちも海岸でゴミを拾うときは、義務としてではなくブルースのように遊び心を忘れずに楽しみながらやりたい。
文:森下茂男

Yipe Stripes(贈答用リボン)
Long Vacation(サングラス)

Canzilla(缶)

Flip Flap Exprosion(ビーチサンダル)
ブルース・オズボーン略歴
初個展「LA Fantasies」をきっかけに写真家としての活動を日本で開始したのが1980 年。コマーシャル写真家として活躍するいっぽう、ボストン子供の博物館企画展「TEEN TOKYO」やアメリカの高校生に生の日本情報を伝える双方向教育番組のディレクターなど、日本とアメリカのユースカルチャーの交流に貢献。1982 年から親子をテーマに写真撮影をスタート。親子写真は国内外で数多く展覧会が開催された。2003 年に7 月第4 日曜日を「親子の日」にと提唱。「親子の日」のオリジネーターとしてソーシャルな事業にも多く関わる。「親子の日」10 周年記念に制作した映画「OYAKO」はベルリン国際映画祭でベストドキュメンタリー賞を受賞。また写真を通じたソーシャルアクションが認められて東久邇宮文化褒賞を授与。葉山に移住した2003 年からはじめたビーチコミングが、環境に配慮したテーマ「Nature Calls」に出会うきっかけとなった。

